【作例あり】初代オートボーイAF35Mってどんなカメラ?

今回の主役はCanonのフィルムカメラ「AF35M」。
初代オートボーイと呼ばれる機種です。

実は私が物心がつくころには、既にデジタルカメラの時代が始まりつつありました。
そうした背景もあり、フィルムネイティブ世代の方々に比べると知識も経験もまだまだなのですが、フィルム初心者の私だからこそ伝えられる魅力もあると信じてこの記事を書いています。

購入を検討している方を含め、このカメラに興味を持っている方の役に立てれば嬉しいです。

オートボーイってどんなカメラ?

初代オートボーイことAF35Mは、1979年発売のCanon初のオートフォーカスモデルのカメラです。

標準レンズは38mm F2.8の単焦点
後ほど作例をいくつか掲載しますが、なかなかいい写りをしてくれます。

操作はとても簡単。基本シャッターボタンを押すだけです。
旅行先で写真撮ってもらう時、セッティングをして「押せば撮れますんで!」というのをよくやりますが、このカメラはいつでもどこでも文字通りシャッターボタンを押すだけで写真が撮れます。

やたら大きなシャッター音

「The ボタン」とでも言いましょうか、ついつい押したくなるシャッターボタンを押し込むと「ジッ」となかなかの音量でシャッターが切れます。

指を離すと「ゔぃーー」と自動でフィルムを巻き上げてくれます。
巻き上げの音量はさらに大きいです。

よくこの初代オートボーイの特徴として「シャッター音がうるさい」ことが挙げられますが、私も同感です。
正確に言うとシャッターを切った後のフィルム巻き上げの音がかなり大きいです。
1枚撮影しただけで周囲の視線を集めてしまうことも多々あります。
撮影向きの場所でない場合には、よく狙って1枚で決めましょう…。

カメラとして必要最低限のシンプルな機能

そしてシャッターに加えて撮影者が操作できるのはオートフォーカスの誘導(プレフォーカス)とフラッシュ、セルフタイマー(10秒)だけ。
スマートフォンやデジタル一眼レフに慣れきっていると、正直機能面での物足りなさを覚えることはもちろんあります。
しかし、カメラの必要最小限を極めたようなシンプルな機能は、スナップ撮影では武器になります。
ピントをきっちり合わせるには慣れと運が必要ですが。

ひと目見てカメラだと分かるような、角張ったデザインも相まってお気に入りです。
オートボーイシリーズは本当にたくさんのモデルが発売されましたが、初代オートボーイが一番無骨なデザインであったような気がします。

ちなみに、使用する電池は単3の乾電池2本です。
電池の持ちは短いということもなく、通常使用で十分数百枚の撮影はできると思われます。

セルフタイマーと兼用のプレフォーカス機能

シャッターを半分押すと「IRED」と呼ばれる近赤外光が被写体に向かって照射され、その反射光をセンサーで感知してピント位置を自動で合わせてくれます。

シャッターボタンを押し込んで撮影すれば、ファインダー中央の印あたりに捉えたものにピントが合います(写真中央の◯印)。
(撮影角度が少しずれてしまったので印が右下に寄っていますが、本来これらの印はファインダーの真ん中にきます)

中央以外の場所にピントを合わせる場合にはセルフタイマーレバーを下げ、ピントを合わせたいものを中央に捉えて一度シャッターボタンを押します。
すると下部のフォーカスゲージが移動し、だいたいどれくらいの距離にピントが合っているか教えてくれます。
一番右の山のマークが無限遠でそこから左にいくにつれて撮影者側に近づくイメージですが、これはあくまで「だいたいの目安」です。

ピントが(だいたい)合ってると感じたら、思い描いた構図になるようカメラを向け直し、もう一度シャッターボタンを押せば写真が撮れます。
うかうかしているとセルフタイマーが起動して勝手に写真が撮られてしまうので、ピント合わせからシャッターまでを10秒以内に行わなければなりません。

はじめはこの動作に慣れるまでまごつくかもしれませんが、いつの間にか動作が自然に身につくようになるでしょう。

ちなみに、ピント合わせがうまくいかないとこのような写真ができあがります。

見事にどこにもピントが合っていませんね。
この時は被写体(文鳥)が動き回ったことに加えて、距離も近かったので撮影が難しかったと言い訳をさせていただきます…。

F2.8のレンズとやたら明るいフラッシュ

また、レンズについたダイヤルを回してISO感度の設定をしておけば、光が足りないことをファインダー内で教えてくれます。

比較的明るいレンズ(F2.8)を搭載しているので、屋外でこの光量不足ランプが点灯することは少ないのですが、夕暮れ以降や屋内ではフラッシュ無しの撮影はやはり厳しいみたいです。

フラッシュを炊きたいときには、カメラ前面のフラッシュスイッチをずらします。
「ヒューン」という音でフラッシュのチャージが始まり約15秒、ファインダー横のオレンジ色のランプが点灯したら撮影可能になります。

ただこのフラッシュ、想像以上の明るさです。

車

こちらは街頭のない場所で内蔵ストロボを使って撮影した一枚。
数メートル先までしっかり光が飛んでいます。

ガイドナンバーの値こそ14ではありますが、直視していなくても「まぶしっ!」と言われるほどのまぶしさです。
おかげで夜でも割と暗さは気にせず写真を撮ることができます。人目を十分に気にする必要はありますが。

ちなみに、このカメラが対応しているのはISO感度50〜400のフィルムです。
「Kodak Gold 200」や「フジカラー PREMIUM 400」など、安価で入手しやすいフィルムを使うことが多いですが、いろんな製品に挑戦してはいます。

オートボーイで撮った写真たち(作例)

お待たせしました。
Canon AF35Mで撮影した写真の中から数枚を作例としてご紹介します。
まだこのカメラを購入してから500枚ほどしか撮影していないので試し撮り程度ではありますが、参考程度にのぞいていっていただけると嬉しいです。

これらの写真の撮影に使ったのは「Kodak Gold 200」というフィルムで、現像はFRAMEさんにお願いしています。

AF35M×屋外

ここでは、さまざまな被写体を対象にした屋外での作例を6つご紹介します。
写真を選定していて気がついたのですが、いつの間にか海の写真ばかりを撮っていたようです。
作例としてご紹介する写真も、青色多めで偏ってしまっていますが、あしからず…。

作例①「夕陽とワンピース」

夕日と女性

夕日が沈む夏の18時頃、太平洋をバックに逆光の中撮影した写真です。
薄くかかった雲はざらついた描写になっていますが、それがかえってキャンバスに描かれた油絵のような穏やかさを醸し出しています。

作例②「夏」

海とスニーカー

夏を感じる一枚です。
スニーカーを脱ぎ捨て、海に浸りながら撮影しています。
個人的にこのオートボーイというカメラ、というかCanonのレンズは濃すぎず薄すぎない「ちょうど良い」写りをしてくれる印象です。
この写真も、撮影時に思い描いたものとかなり近い仕上がりになりました。

作例③「雪原」

雪原

季節は移ろい、冬になりました。
少し青みがかった色味が好きなので、この写真も青っぽく仕上げてもらっています。
やはり空の描写については賛否両論分かれそうではありますが、個人的にはこのざらざら感が好みです。

作例④「船上」

船内入口の表示灯

こちらも12月の寒い日、青森と函館を結ぶフェリーで撮影した写真です。
船全体に漂う寂しげな雰囲気を表現したくなってカメラを片手にデッキに出たのですが、かなり理想に近い写真が撮れたように思います。
レトロさを十分残しながらしっかりと写る、かなり優秀なカメラなのではないでしょうか。

Canon AF35M×屋内

ISO感度の関係でこのカメラを使うのは昼間の屋外が多いのですが、フォルダを探してみたところ室内で撮影した写真もいくつかありました。
ここでは2枚ほど作例としてご紹介します。

作例⑤「海の見える駅」

日立駅

早朝、海の見える駅から撮影した一枚です。
影をはじめとした黒い部分をしっかりと描写してくれるので、やりすぎない程度にメリハリがつきます。
40年以上前のカメラでここまでの描写…さすがCanonさんです。

作例⑥「旅」

ばっちり令和に撮影したものですが、このカメラで撮ると完全に昭和を感じる写真になりますね…。
こちらも影の部分の描写がよく分かる一枚となっています。

作例⑦「つま先立ち」

足跡

屋内かつ窓のない環境で撮影したものも掲載しておきます。
こちらは屋内でフラッシュを炊いて撮影しました。
自然な光加減で、フラットに撮影できています。

ISO感度を上げて明るく撮影することはできませんが、ある程度の融通は利くと思って良いでしょう。

番外編「最初の1枚」

作例の趣旨からは少しそれてしまうのですが、「撮り始めの1枚」は感光してこのような仕上がりになります。

風景

ちゃんと撮れていないと言ってしまえばそれまでなのですが、個人的にはこの「はじめの一枚」は結構お気に入りだったりします。
味のある描写に加えて、こうして偶然が作り出した一枚を撮ることができるのもフィルムカメラの魅力だと思っています。

撮りたいを満たしてくれるシンプルなカメラ

初代オートボーイ(AF35M)は非常にシンプルなカメラで、現代のデジタルカメラやスマートフォンに慣れきっているとその機能の少なさに驚くかもしれません。
ただ、「撮りたい」という思いを沸き立たせてくれる上に、その思いにしっかり応えてくれるのは紛れもなくこのカメラの魅力だと思います。
音も大きいし、時々壊れてしまうこともあるけれど、はいつも外に出かける際にこのカメラを持ちたくなるのです。

この記事を書いた人

ハテシマサツキ

広報領域を中心に活動するライター。
線香花火が好きすぎて年中常備している。